環境と経営の両立を目指して

 

環境経営とは

 

 

 

環境経営とは、企業が持続的に発展していくために、地球環境と調和した経営を行っていくという概念である。
環境問題への対策はコストがかかるものの、長期的な視野を持てば企業の持続的な発展につながるとされている。たとえばISO14000の取得やゼロ・エミッションは環境経営の一つであり、多くの企業では自社の価値を高めるためにこれらに向けた取り組みが行われている。

 

(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 

※他に以下のサイトも紹介しておきます。

 

環境省ポータルサイト 環境と経営

 

環境経営に取り組む意義

 

経済と環境を取り巻く背景

 

企業の経済活動と環境への負荷は切っても切り離せないものです。そのため、環境負荷をゼロにした経済活動を行うことは不可能とされています。

 

しかし、経済というのは環境が整ってこそ発展していくものです。無制限に環境汚染物質を大気中に放出してたり、地球資源を使っていては経済のみならず、人類の繁栄にも多大な影響を及ぼします。

 

国際シンクタンク「グローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network-GFN)」は、近年「アース・オーバーシュート・デイ」というものを発表しています。

 

2019年は7月29日が「アース・オーバーシュート・デイ」であると発表しました。

 

「アース・オーバーシュート・デイ」とは、地球が生産する1年分の資源を人類が使い果たした日を表しています。2019年は1年間で使うはずの資源を、7月29日時点で使い果たしてしまったことになります。

 

では、残りの4ヵ月分はどうしているのかというと、未来から前借したカタチになります。

 

https://www.overshootday.org/newsroom/press-release-june-2019-japanese/

      

1971年の「アース・オーバーシュート・デイ」は12月末であり、地球が1年で生産した資源をおおむね1年で消費していたことに対し、わずか50年の間に5ヵ月も後退したことになります。

 

数値には、使用する水、土地、水産資源や森林資源、またそれらが二酸化炭素を吸収する量などが含まれており、活動を維持するために必要な陸地や水域の面積として表現されています。

 

数値は経済活動に限らず、通常の生活などのすべての活動が含まれていますが、特に環境負荷の高い経済活動を考えるうえでは外せないものとなるのではないでしょうか。

 

このようなデータも表面化される中、2015年には国連において「持続可能な開発サミット」が開催され、「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。

 

※詳しくはSDGsをご覧ください。 

 

また、2016年にはCOP21において、2020年以降の地球温暖化対策の枠組みとなる「パリ協定」が採択され、同年11月4日に発行されています。

 

多くの大企業は世界の動きをいち早く察知し、環境経営を重要な経営要素として取り込んでいます。そして、環境経営推進を自社のみならず、関係する各社(バリューチェーン)に求めています。

 

このような状況は、中小事業者にとって自らの事業を発展させる、関係各社や地域からさらに信頼を得る絶好のチャンスだと言われています。

 

企業評価の基準

 

近年、企業活動の評価にも変化が見られます。特に投資家などによる投資の評価対象は、単に経済指標を対象とすることなく、企業の持続可能性や社会的責任などを評価するものとなってきています。

 

投資家などから見て、経済、環境、社会に配慮した活動を行っているかという、トリプルボトムラインが評価の基準になりつつあります。

 

※経済的側面に加えて、環境的側面と社会的側面を加えて企業活動を評価しようというものが、このトリプルボトムラインという概念です。

 

 

このような投資はESG投資と呼ばれ、わが国の年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もすでにESG投資運用に着手しています。

 

※ESG投資 ⇒ 各頭文字に配慮した企業に行われる投資のこと

 

E=Environment(環境) S=Social(社会課題) G=Governance(企業統治)

 

多くの大企業は世界の動きをいち早く察知し、トリプルボトムラインに配慮した企業活動を重要な経営要素として取り込んでいます。そして、その活動を自社のみならず、関係する各社(バリューチェーン)に求めています。

 

このような状況は、中小事業者にとって自らの事業を発展させる、関係各社や地域からさらに信頼を得る絶好のチャンスだと言われています。

 

他にも学生が就職先企業を選ぶ際の基準のなかで、トリプルボトムラインを重視している企業かどうかが重視されていることも近年の調査結果によりわかってきています。

 

また、企業経営、組織運営において、国際統合報告評議会(IIRC)で策定された「国際統合報告フレームワーク」によれば、企業経営には6種類の資本が必要であるとされています。

 

(1)財務資本:組織が利用可能な資金
(2)製造資本:組織が利用できる製造物
(3)知的資本:組織的な知識ベースの無形資産
(4)人的資本:社員の能力、経験、及びイノベーションへの意欲
(5)社会・関係資本:組織のブランド、 評判、 価値共有、 及びコミュニティ形成
(6)自然資本:保全された全ての環境資源

 

環境マネジメントツールの1つである、エコアクション21では「エコアクション21の認証・登録とそれを継続するプロセスによって、中小事業者が3種の資本、すなわち、(4)人的資本、(5)社会・関係資本、(6)自然資本の質的な向上を実現することによって、 (1)財務資本、 (2)製造資本、 (3)知的資本を増強するために必要な社会的信頼を得る」ことを、すべてのエコアクション21関係者の共有の理念として位置付けています。

 

企業経営に必要な6種類の資本

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

この理念を認証・登録の手順に沿って、より分かりやすくエコアクション21を定義すれば、 「自然資本を維持するという全人類の果たすべき義務を実践することによって、従業員の能力・経験・意欲が向上し、 それによって高い価値を有した事業者であると評価され、同時に、社会やコミュニティからの高い信頼を得ることをゴールとしたPDCAサイクルを手段とする枠組み、それがエコアクション21である」と言えます。(エコアクション21ガイドライン2017年版より)

 

このように、環境経営を推進することは、地域の要である中小企業にこそ強く求められます。

 

政策的な位置づけ

 

わが国においても、環境への取り組みの実効性を高め、企業価値を向上させる仕組みとして、環境経営のためのマネジメントシステム(EMS)への期待が大きくなっています。

 

例えば、地球温暖化対策計画(2016年5月閣議決定)では「中堅・中小企業向けエコアクション21などPDCAサイクルを備えた環境経営のためのマネジメントシステムの普及を進め、環境経営の実効性を高めていくとともに、企業における従業員の教育を促すことで、事業活動における更なる環境配慮の促進を図る」旨が盛り込まれています。

 

 

エコアクション21とは

 

 

当事務所は、エコアクション21サポーターとして環境経営に取り組む事業者さまを支援しています。

 

※認証・登録番号  サポーター190041

 

エコアクション21は、環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステム(EMS)です。

 

エコアクション21中央事務局HP

 

環境マネジメントシステムは、有名なところでISO14001などがありますが、中小企業には取り組みが難しいとの声も多く、中小企業でも取り組みやすいエコアクション21が策定されています。

 

詳しくは、以下のガイドラインを参照してください。

 

環境省 エコアクション21ガイドライン2017年版

 

 

エコアクション21に取り組むメリット

 

 

 

エコアクション21に取り組むメリットは業種や会社規模にもより様々ですが、エコアクション21ガイドライン2017年版によると以下の5つが掲載されています。

 

共通して言えることは、単に環境に対する取り組みにとどまらず、取り組みを通して経営力を向上させ、企業内部、外部のどちらから見てみも魅力的な会社になろうということを目的として策定されています。

 

@ 経営力向上、組織の活性化が出来る

 

・ 環境への取り組みを切り口に、経営力向上と組織活性化が同時に達成できる
・ 経営における「課題とチャンス」を明確化することで経営判断の幅が広がる
・ 「環境経営方針」「環境経営目標」を策定するため、経営判断に計画性が加わる
・ 全員参加型の取り組みであるため、経営者と従業員、従業員間に相互理解が生れ組織が活性化する

 

A 様々な顧客からの要望に応えることができる

 

・ 多くの大手企業がバリューチェーン全体に環境管理(CO2排出削減、環境関連法規の遵守など)を求めている傾向にある中で、その期待に応えることができる
・ 地域における環境への取り組みに積極的な地方公共団体や経営力強化を推進する地域の金融機関の支援が受けられる

 

B 取組項目が明確で、効果的・効率的に取り組みを進めることができる

 

・ エコアクション21は事業者の実務負担に配慮し、必ず把握すべき環境負荷項目(CO2排出量など)と、必ず取り組むべき活動(省エネなど)を定め、最小限の工数で効果をあげることができる

 

C 環境経営レポートで、自らの取り組みを発信できる

 

・環境レポート作成と公表により多くの関係者と相互理解を深め、事業者への信頼を高め協働の輪を広げることができる

 

D 第三者による認証・登録制度を有し、社会的信頼を高めることができる

 

・ 環境省による要件適合確認を受けたエコアクション21中央事務局の認証・登録を受けることとなるため、社会的信頼を得ることができる
・ ロゴマークを活用した積極的なPRが可能
・ エコアクション21審査員から審査の一部として、取り組みレベルを向上させるための助言を受けることができる
・ 認証を取得することによって、自治体からの補助や入札審査での加点を受けることができる場合があるとともに、多数の金融機関がエコアクション21に取り組む事業者への低金利融資制度を設けている

 

 

エコアクション21で要求される事項

 

 

エコアクション21では、全ての事業者が効果的で効率的な環境経営システムを導入し、発展させることが可能となるように、「環境経営システム」の構築、 運用、維持に関する14の要求事項を定めています。

 

14の要求事項は下記図のとおり、計画の策定(Plan)、改革の実施(Do)、取り組み状況の確認および評価(Check)、全体の評価と見直し(Action)の4つの段階に区分されます。

 

PDCA サイクルとエコアクション21における要求事項

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年度版」

 

 

※以下、各要求事項についてエコアクション21ガイドライン2017年版より抜粋して掲載しています。

計画の策定(Plan)

 

要求事項 1. 取り組みの対象組織、活動の明確化

 

 

(1) 組織は、原則として全組織・全活動(事業活動及び製品・サービス)を対象としてエコアクション21に取り組み、環境経営システムを構築、運用、維持する。

 

(2) 認証・登録に当たっては、対象組織及び活動を明確にする。

 

※原則的に全組織・全活動とされていますが、事業規模等の事情により、段階的認証やサイト認証といった一部組織・活動を対象とできる場合もあります。ただし、環境負荷の大きな活動を除外し、その他を認証するといったいいとこ取り(カフェテリア認証)は認められません。

 

 

対象範囲の選択フロー図

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

要求事項 2. 代表者による経営における課題とチャンスの明確化

 

 

(1) 代表者は、経営における課題とチャンスを整理し、明確にする。

(2) 整理と明確化に当たっては、以下の事項を考慮する。
・ 事業内容
・ 事業を取り巻く状況
・ 事業と環境とのかかわり

 

※代表者は、事業内容等を考慮し、経営における課題とチャンスを整理し、明確にします。課題には組織の外部からのもの、内部にあるもの、チャンスには課題を克服することにより生じる新たな事業発展の機会などがあります。

 

※代表者が考える課題やチャンスは、環境経営方針や環境経営目標に反映させる必要があります。比較的中長期の者は環境経営方針(要求事項3)、短期のものは環境経営目標(要求事項6)に、それぞれ可能な範囲で反映させます。

 

課題とチャンスの整理と明確化のフロー図

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

要求事項 3. 環境経営方針の策定

 

 

(1) 代表者は、環境経営に関する方針(環境経営方針)を定め、誓約する。

 

(2) 環境経営方針は,次の内容を満たすものとする。
・ 企業理念及び事業活動と整合させる
・ 経営における課題とチャンスを踏まえる
・ 環境への取組の重点分野を明確にする
・ 環境経営の継続的改善を誓約する
・ 適用される環境関連法規などの遵守を誓約する
・ 環境経営方針には、制定日(又は改定日)及び代表者名を記載する

 

(3) 環境経営方針は、全従業員に周知する。

 

※代表者は、自らの言葉で事業の特徴に適合した環境経営方針を定め、方針に基づく活動の実行を誓約します。また、環境経営方針は、環境経営レポートにより公表します。

 

※環境への取組みの重点分野は、エコアクション21の取組で必須となっている二酸化炭素排出量の削減(省エネ、再エネの利用など)、廃棄物排出量削減(事業活動にともなう廃棄物の発生抑制や3R推進など)、水使用量の削減、化学物質の削減、製品・サービスを通した環境負荷抑制(環境性能向上製品の開発や顧客の環境意識を向上させるツールの開発など)があります。

 

重点分野の特定と環境経営目標への展開フロー図

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

要求事項 4. 環境への負荷と環境への取組状況の把握及び評価

(1) 対象範囲における事業活動に伴う環境負荷を「環境への負荷の自己チェック」を基に把握し、環境に大きな影響を与えている環境負荷及びその原因となる活動を特定する。環境負荷のうち以下の項目を把握する。

・ 二酸化炭素排出量
・ 廃棄物排出量
・ 水使用量
・ 化学物質使用量

(2) 初回登録時には,事業活動における環境への取組状況を「環境への取組の自己チェック」を基に把握する。把握項目には、自社が提供する製品・サービスなどを含む。

 

※二酸化炭素排出量、廃棄物排出量、水使用量、化学物質使用量については必須項目ですので把握する必要がありますが、それ以外については把握する必要はありません。しかし、事業における材料等の使用量の把握は、経営指標となりますので把握しておくことも必要になります。

 

※また、業種別ガイドラインでは業種別に把握が求められている項目があります。

 

※エコアクション21の認証・登録を初めて受ける事業者は、環境への取組の自己チェック表を用いて現状を把握します。現在どのような環境への取組を行っているのかを把握したうえで、自らの環境負荷を削減するためにどのような取組を行うのかを、自己チェック表にある取組内容を参考に検討します。環境への取組の自己チェック表は、効果的かつ効率的に自社の取組を見直すためのツールです。

 

エコアクション21中央事務局HP 業種別ガイドライン・自己チェック表

 

 

要求事項5. 環境関連法規などの取りまとめ

 

 

(1) 事業を行うに当たって遵守しなければならない環境関連法規及びその他の環境関連の要求など、並びに遵守のための組織の取組を整理し、一覧表などに取りまとめる。

(2) 環境関連法規などは常に最新のものとなるように管理する。

 

※環境関連法規には国が定めた法令、都道府県・市町村などが定めた条例があり、その他の環境関連の要求などには、地域との協定、顧客(納入先・取引先)からの要請、業界団体の取決めなどがあります。自治体によっては、条例から横出し、上乗せ規制をしているところもあります。

 

※一覧表などにまとめるべき内容の詳細さは、「組織が遵守するために必要な程度」であることが必要です。以下にある必要な届出、測定、資格などがわかるように記載します。そして、遵守の評価ができるように表にします。

・施設:対象となる施設、対象となる物資
・届出:設備や管理体制、責任者の届出
・許可:設置許可、実施許可
・測定:測定の方法、回数
・排出基準:排出基準の遵守のための監視測定
・記録:測定結果の記録、産業廃棄物のマニフェスト記録
・報告:環境負荷物質排出量などの行政への報告、産業廃棄物の処理委託実績報告
・保管:保管基準、産業廃棄物の保管基準
・資格:必要な法的資格者、講習の受講者
・責任:日常管理部門、行政との対応部門             

                    など

 

エコアクション21で対象とする環境関連法規

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

 

要求事項 6. 環境経営目標及び環境経営計画の策定

(1) 要求事項2〜5(経営における課題とチャンスの明確化、環境経営方針の策定、環境への負荷と環境への取組状況の把握及び評価、環境関連法規などの取りまとめ)を踏まえて、具体的な環境経営目標及び環境経営計画を策定する。

 

(2) 環境経営目標は、可能な限り数値化し、以下の事項に関する目標を設定する。
・ 二酸化炭素排出量の削減
・ 廃棄物排出量の削減
・ 水使用量の削減
・ 化学物質使用量の削減
・ 自らが生産・販売・提供する製品の環境性能の向上及びサービスの改善

 

(3) 環境経営計画には、環境経営目標を達成するための具体的な手段、日程及び責任者を定める。

 

(4) 環境経営目標及び環境経営計画は、毎年度及び要求事項2〜5の大きな変更時に見直しをする。

 

(5) 環境経営目標と環境経営計画は、関係する従業員に周知する。

 

※環境経営目標として設定すべきと考えられる項目の例として、企業価値の向上の観点から、環境負荷の削減だけでなく、以下のような項目で目標を設定することが考えられます。

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

※環境経営目標は、実施可能な範囲で適切に設定することが重要です。達成(必達)に固執し、過度に低い目標を設定すること、達成が難しい過度に高い目標を設定すること、毎年1%削減などの根拠が乏しい目標を設定することなどは適切ではありません。

 

※環境経営目標は、単年度の目標、及び単年度の目標と連動した3〜5年程度を目途とした中期の目標を策定します。環境経営目標は、可能な限り数値化しますが、数値化できない場合でも可能な限り目標の達成状況の目安となる指標(行動目標など)を策定します。

 

環境経営目標、環境経営計画の策定のフロー図

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

計画の実施(Do)

 

要求事項 7. 実施体制の構築

 

 

エコアクション21を運用、維持し、環境経営を実践するために、代表者は以下の事項を実施する。
・ 効果的で必要十分な実施体制を構築する
・ 実施体制においては,各自の役割, 責任及び権限を定め,全従業員に周知する
・ エコアクション21を運用し,維持するための経営資源を用意する

 

※経営改善と環境への取組を一体的に運用することにより、より効果を高めることができます。代表者はエコアクション21を運用するための経営資源は、経営改善のための資源と考えることができます。

 

※経営資源にはヒト(時間、技能、知識)、モノ(設備、インフラ)、資金(設備投資、教育投資)、情報(顧客ニーズ、技術情報)などがあります。代表者は環境管理責任者や事務局、担当者に指示を出しますが、必要な経営資源を与えておくことが求められます。

 

 

要求事項 8. 教育・訓練の実施

 

 

エコアクション21の取組を適切に実行するために、以下の教育・訓練を実施する。
・ 全従業員を対象とした教育・訓練
・ 環境に関する特定の業務がある場合, その業務に関わる従業員を対象とした教育・訓練

 

※教育・訓練の例としては、次のようなものが考えられます。教育・訓練は集合しての座学とは限らず、現場でのOn The Job Training(OJT)、コミュニケーションを含めて検討することが望まれます。

 

◎認識を高めるための教育・訓練の内容(例)
◆全従業員
・ エコアクション21の基本的な仕組みと目的
・ 地球環境問題の現状やエコアクション21における環境への取組の意義、重要性
・ 環境経営、環境経営方針の内容と自身の業務との関わり
・ 環境経営目標及び環境経営計画の内容、手順と自身の業務との関わり
◆管理職
・ 部門の環境経営目標及び環境経営計画の具体的内容
・ 部門の責任者としての役割、責任及び権限

 

◎特定の業務に従事する者への教育・訓練の内容(例)
◆環境関連法規などに関連する業務の担当者
・ 環境関連法規などの具体的に遵守すべき内容、遵守手順
・ 必要な資格、能力など(例:公害防止管理者、エネルギー管理士、特別管理産業廃棄物管理責任者、危険物取扱者など)の取得に必要とされること
◆環境に大きな影響を及ぼす活動に従事している者
・ 当該の活動による環境への影響の程度、緊急時における想定される被害等の状況(例:排水処理担当者、焼却炉運転担当者、緊急事態への対応者)
◆環境関連法規などの遵守状況を評価する者
・ 環境関連法規などの具体的に遵守すべき内容

 

 

要求事項 9. 環境コミュニケーションの実施

 

 

エコアクション21の取組を段階的に発展させるために、以下のコミュニケーションを実施する。
・ 組織内において、エコアクション21に関する内部コミュニケーションを行う
・ 外部からの環境に関する苦情や要望を受け付け、必要な対応と再発防止を行う
・ 本ガイドライン第3章に掲げる環境経営レポートを年次で作成し、公表する

 

※内部コミュニケーションは、朝礼や会議、掲示板(電子掲示板)、社内メール、社内共有のSNSなどで一方通行にならないよう双方向の伝達を行います。従業員から意見やアイデアを取り入れることができる仕組みなどをつくることが大切です。

 

※外部からの環境に関する苦情は、騒音、振動、臭気、粉じん、汚水などが考えられます。要望にはこれらの対策や防止策があげられます。

 

内部、外部のコミュニケーションイメージ

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

要求事項 10.実施及び運用

 

 

(1) 環境経営方針、環境経営目標及び環境経営計画の達成、並びに環境関連法規などの遵守に必要な取組を実施する。

 

(2) 環境経営方針、環境経営目標を達成するため、必要に応じて手順書を作成し運用する。

 

※環境経営計画の実施、環境関連法規などの遵守、及びその他の環境への取組を効果的かつ効率的に行うために、必要な場合は手順書などを作成し運用します。手順書は5W1Hを意識し、だれでもわかるように作成することが大切です。

 

取組対象の展開

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

要求事項 11.環境上の緊急事態への準備及び対応

 

 

 

(1) 環境上の事故及び緊急事態を想定し、その対応策を定め、可能な範囲で定期的に試行するとともに訓練を実施する。

 

(2) 事故や緊急事態の発生後及び試行の実施後に、対応策の有効性を検証し、必要に応じて改訂する。
※事故や天災などにより、油の流出、化学物質の放出などの環境上の緊急事態が発生する可能性があります。自らの事業活動において、環境に重大な影響を及ぼすどのような事故及び緊急事態が発生するか、その可能性を想定し、環境汚染などが最小限の範囲で済むよう、あらかじめ有効な対策を実施するとともに緊急事態発生時の対応策を定め準備します。

 

※対応策の手順が適切であり、問題点はないかを確認するために、可能な範囲で定期的な試行を行うとともに、その対応策を社員に定着させるため訓練を行います。試行と訓練は同時に行うこともできます。

 

※緊急事態の発生後や試行の実施後、対応策が効果的であったかどうかを検証し、必要に応じて対応策を改訂します。

 

※環境上の事故及び緊急事態には、以下の例があります。組織の実態に合わせて、リスクが高く対応すべき緊急事態があるかどうか想定することが必要です。
・基準値を超える排水の流出,排水処理設備の故障等による未処理水の流出
・基準値を超える排ガスの排出
・危険物、有害物の流出
・火災の発生
・気候変動による水害
            など

 

 

要求事項 12.文書類の作成・管理

 


(1)エコアクション21の取組を実施するために、以下の15 種類の文書類(紙又は電子媒体など)、及び組織が必要と判断した文書類を作成し、適切に管理する。
・ 環境経営方針
・ 環境への負荷の自己チェックの結果
・ 環境への取組の自己チェックの結果
・ 環境関連法規などの取りまとめ(一覧表など)
・ 環境経営目標
・ 環境経営計画
・ 実施体制(組織図に役割などを記したものでも可)
・ 外部からの苦情などの受付状況及び対応結果
・ 事故及び緊急事態の想定結果及びその対応策
・ 環境上の緊急事態の対応に関する試行及び訓練の結果
・ 環境経営目標の達成状況及び環境経営計画の実施状況、及びその評価結果
・ 環境関連法規などの遵守状況の結果
・ 問題点の是正処置及び予防処置の結果
・ 代表者による全体の取組状況の評価と見直し・指示の結果
・ 環境経営レポート

 

(2)組織が取組の際に必要と判断した手順書

 

※エコアクション21に必要な文書類以外に、エコアクション21の運用に組織が必要と判断した文書類を定めます。

 

※組織が定めたエコアクション21の運用に必要な文書類の例には、以下のものが考えられます。
・ 課題とチャンスの整理結果
・ 教育・訓練計画
・ 教育・訓練記録
・ 対象とすべき環境負荷及び活動状況評価の結果
・ エコアクション21を運用,維持するためのルールを取りまとめたもの(例:環境経営マニュアル)

 

※文書類の管理は、何の文書類か、どこに保管されているか、最新版かどうかなど、エコアクション21の活動を適切に、効率的に運用するためのルールとして定めるものです。組織にとって、適切、確実な実施に必要な程度で手順を定めます。
(参考)
・タイトル
・日付
・作成者、承認者
・管理番号
・版など変更の管理
・形式(紙/電子)
・配布先と配付方法
・保管、保全方法
・データのバックアップ方法
・保管期間 ・廃棄の方法
             など

 

 

取組状況の確認及び評価(Check)

 

要求事項 13.取組状況の確認・評価,並びに問題の是正及び予防

 

 

(1)環境経営システムに関する以下の項目の確認・評価を適切な頻度で実施する。
・ 環境経営目標の達成状況
・ 環境経営計画の実施状況
・ 環境関連法規などの遵守状況
・ 重要度の高い環境負荷の状況及び取組の実施状況

 

(2)問題がある場合は是正処置を行い、問題の発生が予想される場合は、必要に応じて予防処置を実施する。

 

(3)規模が比較的大きな組織の場合は、内部監査を実施する。

 

※取組状況の確認は,エコアクション21の取組、仕組みが適切に実施、運用されているかを確認、評価するためのものです。確認はその内容により適切な頻度で行います。確認の結果(例:順調、未達成、遅延、実施不十分)に対する評価を行い、問題がある場合は原因を究明し、対策を行います。

 

取組状況の確認と評価の例

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

※必ずしも表を作成する必要はありませんが、何に対し、いつ、どのように確認、評価するかを明確にしておくことが望まれます。

 

全体の評価と見直し(Act)

 

要求事項 14.代表者による全体の評価と見直し・指示

 

 

代表者は、定期的にエコアクション21に基づく環境経営全体の取組状況及びその効果を評価し、以下の項目を含む総括的な見直しを実施し、必要な指示を行う。
・ 環境経営方針
・ 環境経営目標及び環境経営計画
・ 実施体制

 

※代表者は、エコアクション21全体の総括的な見直しに必要な情報を収集し、環境経営システムが有効に機能しているか、環境への取組が適切に実施されているかを経営的な視点から、定期的(少なくとも毎年1回)に評価し、見直しを行います。

 

※代表者は評価結果に基づき、経営上の課題とチャンスで明確化した内容を踏まえ、環境への取組や環境経営システムにおいて成果をあげ、更に発展強化させる点、環境への取組や環境経営システムにおいて改善すべき点などを抽出し、環境経営方針、環境経営目標、環境経営計画及び実施体制などの見直しを行い、必要に応じて変更に関する指示を行います。

 

※代表者による評価とは、単に環境経営目標が「達成できた」あるいは「達成できなかった」という取組の結果を取りまとめるだけでは十分ではありません。達成状況や取組についての結果を踏まえて、達成できた場合は目標の設定方法やレベルに問題はなかったか、達成できなかった場合はその原因が何かを明らかにすることまでを評価と考えることが必要です。

 

 

エコアクション21の認証、登録

 

エコアクション21の認証・登録を受けようとする事業者は、エコアクション21ガイドラインで規定する要求事項に基づき, 以下の基本的な取組を適切に実施した上で、審査員による所定の審査を受審し、判定委員会での審議を経て、中央事務局から要求事項を満たしていると認められる必要があります。認証・登録の基本要件には、主に以下の7点があります。

 

1. 「計画の策定(Plan)」、「計画の実施(Do)」、「取組状況の確認及び評価(Check)」及び「全体の評価と見直し(Act)」からなるPDCA サイクルに基づく環境経営システムを適切に構築していること

 

2. 構築した環境経営システムを3か月以上(PDCA サイクルを一度実行する)、適切に運用し、維持していること

 

3. 環境負荷(二酸化炭素排出量, 廃棄物排出量, 水使用量など)を把握し、必要な環境への取組(二酸化炭素排出量の削減、廃棄物排出量の削減、水使用量の削減、自らが生産・販売・提供する製品の環境性能の向上及びサービスの改善など)を適切に実施していること

 

4. 代表者による全体の評価と見直し・指示が適切に行われていること

 

5. 環境経営レポートを定期的に作成し、公表していること

 

6. 原則として環境などのデータを審査員に提供していること

 

7. 環境への負荷及び取組状況の自己チェックの内容、環境経営方針、環境経営目標、環境経営計画の内容、並びに環境経営レポートの内容が整合していること

 

エコアクション21の審査は、エコアクション21中央事務局が認定し登録した審査員によって行われます。審査員は、事業者からのエコアクション21の認証・登録の申し込みに基づき、事業者に対し審査及び指導、助言などを行います。

 

制度全体の概要は、以下のとおりです。

 

エコアクション21認証・登録制度の概要

(出典)環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」

 

 

認証・登録は2年ごとの更新となります。認証・登録事業者は、認証・登録の1年後に中間審査を受審します。

 

中間審査の1年後に更新審査を受審し、認証・登録の更新を行います。

 

 

エコアクション21 審査、認証・登録、更新費用

 

各種費用については、以下をご覧ください。

 

エコアクション21中央事務局HP 各種費用

 

 

導入を検討されている事業者さま

 

まずは地域で行われる無料セミナー等に参加することをお勧めします。

 

セミナー等情報は以下からご覧ください。

 

エコアクション21中央事務局HP セミナー等情報

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