結婚とビザは別物
外国人と日本人が結婚して、一緒に日本で暮らすためには外国人配偶者に有効なビザが必要になります。
外国人配偶者が、既に有効なビザを持っている(就労ビザなど)場合は、結婚を機に「日本人の配偶者等」ビザに変更申請することも可能です。
外国人配偶者が、有効なビザを持っていない(外国に住んでいる)場合に、日本で暮らすためには「日本人の配偶者等」ビザを新しく取得する必要があります。
この「日本人の配偶者等」ビザを取得するためには、日本および外国人配偶者の母国の両国で法律上の婚姻が成立していることが要件になります。
つまり、婚姻の手続きと日本で暮らすための手続きが必要になるということです。
両国での婚姻の手続きのみ済ませたところで、外国人が日本で暮らすための手続きを済ませないことには一緒に日本で暮らせないことになります。
婚姻の手続きについては日本の市区町村、相手側の母国の日本大使館(領事館)に確認してから進めていきます。
特に外国人配偶者の出身国によって集める書類等に大きな違いがありますので、事前の確認(大使館または領事館のHPなど)が大切です。
日本で暮らすための手続きは、出入国在留管理庁に対して申請を行います。ここで許可になり有効なビザを取得することで日本で暮らせるようになります。
ただし、両国で婚姻が成立したからと言って無条件で「日本人の配偶者等」ビザが取得できるわけではないことに注意が必要です。
婚姻要件具備証明書について
国際結婚をしようとする多くの場合、婚姻要件具備証明書の取得が必要になります。
婚姻要件とは、その国々で定められた婚姻に関する制度であり、例えば日本では男性は18歳以上、女性は16歳以上でないと法律上有効に結婚することができません。
日本では18歳以上などになっていますが、世界各国ではこの要件も16歳であったり20歳であったり、男女同年齢であったりと様々です。
よって、日本人であれば日本の法律によって婚姻要件を満たしている、外国人であれば母国の法律によって婚姻要件を満たしている必要があります。
この婚姻要件を満たしていることを証明した書類の事を、婚姻要件具備証明書といいます。
日本の市区町村に婚姻届けを出す場合、日本人の婚姻要件具備証明書は通常必要になりませんが、外国人配偶者の母国の役所に婚姻届けを出す場合、日本人の婚姻要件具備証明書が必要になります。
外国人配偶者の母国の役所では、届出をした日本人が日本の法律で婚姻要件を満たしているのかどうかわからないからです。
同じ理由で、外国人配偶者が日本の市区町村に婚姻届けを出す場合、外国人配偶者の婚姻要件具備証明書を求められることになります。
日本人の婚姻要件具備証明書は法務局で取得します。取得した婚姻要件具備証明書を外国人配偶者の母国の役所に提出する場合には、通常、外務省の認証を受ける必要があります。
さらに、外務省の認証を受けた後、外国人配偶者の母国の大使館(または領事館)の認証を受けなければならない場合も多いです。
外国人配偶者の婚姻要件具備証明書の取得方法は出身国によって違いがありますので、事前の確認(大使館または領事館のHPなど)が大切です。
国によっては出生証明書などの添付を求める場合がありますので、事前に母国から取り寄せる必要があります。
日本で先に婚姻手続きをするか、外国人配偶者の母国で婚姻手続きをするかで違いもありますが、いずれにしても市区町村や大使館等へ必要書類等の事前確認が重要です。
「日本人の配偶者等」ってどんなビザ?
「日本人の配偶者等」ビザに該当する者は以下になります。
1. 日本人の配偶者
2. 日本人の特別養子
3. 日本人の子として出生した者
「日本人の配偶者等」ビザは上記の身分を有するものとしての活動を行って、日本に在留する場合に取得できます。
つまり、日本人と結婚した外国人が「日本人の配偶者等」ビザをもって日本で生活するためには、法律上婚姻が成立しているだけでは足りず、日本人の配偶者として活動していることが要件になります。
日本人と外国人の婚姻が有効なものであるかどうかは、日本の国際私法である通則法24条による判断となり、「日本人の配偶者としての活動」については同法25条により夫婦の常居所地法である民法752条の「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」が適用されることになります。
よって、日本人と婚姻はしているが一緒に生活する気はなく、日本での滞在目的はもっぱら就労のためである場合などは「日本人の配偶者等」ビザの資格に該当しません。
そのような場合は、「日本人の配偶者等」ビザではなく、資格該当性がある就労ビザをもって日本で生活するか、就労ビザ等への変更ができない場合は母国に帰ることになります。
また、度々問題になる偽装結婚についても同じことです。法律上婚姻が成立したところで、社会通念上婚姻の事実がない場合は「日本人の配偶者等」ビザが許可になることはありません。
就労ビザとの違い
就労ビザは、その外国人の学歴や職歴などからみた技術や技能に着目した在留資格となり、その資格該当性は「許可を得た資格の範囲内の活動をしているか」というところにあります。
そのため、資格該当性を維持するためには許可された活動の範囲内の就労を続けなければならず、許可された活動範囲外の仕事をした場合、資格外活動として違反になります。
IT関係会社にエンジニアとして就職し就労ビザを得た外国人が、コンビニエンスストアでアルバイトをすることは資格外活動として違反になります。
この就労ビザは、コンビニでアルバイトをするために許可がでたわけではないからです。
また、仕事を辞めてしまうと資格該当性がなくなります。
このように就労ビザは仕事内容や職種と許可を得たビザとの整合性が必要であることに対し、「日本人の配偶者等」ビザは日本人の配偶者や子という身分に着目した在留資格となり、その資格該当性は「日本人の配偶者等としての活動をしているか」ということにあります。
よって、就労の範囲に制限はなく、原則どのような職業にも就くことができます。身分に該当性が求められており、職種などに該当性が求められていないためです。
そのため「日本人の配偶者等」の資格該当性を維持するには日本人の配偶者等であり続ける必要があります。
離婚など、日本人の配偶者でなくなった場合は資格該当性がなくなります。
その他にも、法律上は婚姻関係は継続しているが、合理的な理由なく別居しているなど婚姻関係が実質的に破綻している場合などにおいて、日本人の配偶者等として活動していないと判断され資格該当性がなくなることとなります。
結婚が成立したから確実にビザが取れる?
「日本人の配偶者等」ビザを申請する際に、質問書というものを提出します。この質問書によって、日本人と外国人配偶者の交際の経緯等を詳細に説明する必要があります。
質問書に記載することは外国人の国籍や日本人の住所や会社名等の個人情報のほか、初めて知り合った時期、場所や結婚までのいきさつなどを書類により説明していくことになります。
質問書の記載事項
1. お互いの身分事項について(国籍、住所や会社名など)
2. 結婚に至った経緯
3. 夫婦間の会話で使われている言語
4. 日本国内で結婚された方は、結婚届出時の証人2名の氏名、住所、連絡先
5. 結婚式(披露宴)を行った方は、その年月日と場所等
6. 結婚歴について(初婚・再婚など)
7. 申請人(外国人)がこれまでに来日されているときは、その回数と時期
8. 配偶者(日本人)がこれまでに申請人の母国に行かれているときは、その回数と時期
9. 外国人の日本から退去強制(出国命令含む)されたことがあるか
10. 9がある場合の違反の内容等
11. 申請人(外国人)と配偶者(日本人)の親族の氏名、住所、連絡先
12. 親族で今回のご結婚を知っている方について
特に上記2の結婚に至った経緯では、@初めて知り合った時期、場所 A初めて会ってから(紹介により知り合われた方は、紹介されたいきさつから)結婚届を出されるまでのいきさつを、年月日を示しながら、できるだけ詳しく記載(説明に関連する写真・手紙や国際電話の利用などを証明するものを添付)する必要があります。
また、添付書類にはスナップ写真(夫婦で写っており,容姿がはっきり確認できるもの)2〜3葉も必要になり、一定期間の交際を経て結婚に至ったことを具体的に説明する必要があります。
審査において婚姻の成立は要件の重要な部分ではありますが、結婚に至る過程を示していくことも重要になります。
このように、出会いから結婚に至った経緯や経歴についても審査されるため、両国で結婚が成立しているからと言って必ず「日本人の配偶者等」ビザが許可になるとは限りません。
偽装結婚防止の観点からも、厳しく審査される傾向にありますので、国際結婚を考えるうえでは交際中から様々な記録(旅行やテーマパークでとった二人の写真を残す、ラインなどのSNSの記録を残すなど)をとっていくと良いでしょう。
法務省HP 在留資格認定申請必要書類
在留資格変更許可申請の必要書類はコチラ
法務省HP 在留資格変更許可申請必要書類
「日本人の配偶者等」ビザの許可申請にあたって
結婚といってもその態様は人それぞれです。日本人同士であれば良くあることでも、外国人との結婚ではビザの審査において、偽装結婚防止の観点から様々な疑いがもたれることになります。
例えば、芸能人カップルによくある年の差婚などはビザを取得する上でハードルが高くなります。
以下に、ビザを取得する上で不利に働きやすいと言われている国際結婚の態様を載せておきます。
・夫婦間の年の差がかなり大きい
・結婚式をしていない
・交際期間の写真がほとんどない
・交際期間が短い
・外国人配偶者(または日本人側)に複数の離婚歴がある
・日本人側の収入が低い
・結婚紹介所、出会い系サイト、スナックなどでの出会いから交際
上記のような事実があっても、必ず不許可になるとは限りません。不利に働くというだけで、真剣に交際し結婚した事実を証明できれば許可になる可能性も十分にあります。
大切なのは、結婚して一緒に日本で暮らすのだという強い気持ちを資料としてまとめることです。
そのためにも、交際中からたくさんの記録を残しておくことが必要になります。申請の資料にもなりますが、二人の交際中の思い出としても大切なものとなるでしょう。
「日本人の配偶者等」ビザの更新
「日本人の配偶者等」ビザは期限があり、期限終了後も日本で暮らしたい場合は在留期間更新の手続きをする必要があります。
在留期間更新の手続きは期間満了の3ヵ月前からすることができます。
新規許可時と比べて状況が変わっている場合は、更新の審査において説明を求められることがあります。
例えば、別居中である場合、別居に合理的な理由がなければ「日本人の配偶者としての活動」を行ってないということになり、更新は非常に難しくなります。
日本人配偶者が業務命令で期限付きで出向(単身赴任)をしている場合などは更新に影響ないと考えられますが、夫婦生活が実質的破綻していることによる別居と判断された場合は更新できないと考えてよいでしょう。
実際に離婚している場合も更新はできません。日本人配偶者が死亡し、死別となった場合も同様です。離婚調停中や裁判中であれば、判決が確定するまでは更新できる可能性はあります。
このような事情で更新できない場合、外国人配偶者は母国に帰るか、ビザを変更する必要があります。
就労ビザへの変更ができる場合は就労ビザへ、就労ビザへの変更ができない場合は「定住者」(告示外定住)ビザへ変更ができる場合があります。
「定住者」ビザへ変更するための要件は大体以下のとおりです。
1. 婚姻生活がおおむね3年以上ある(日本人の子どもがおり、親権者として養育している場合は3年以下でも可能なケースもあります)
2. 安定した収入がある、収入が見込める
3. 基本的な日本語能力がある
4. 身元保証人がいる
5. 離婚に一定の理由がある(離婚に至った経緯、死別、日本人配偶者側に問題がある場合など)
6. 日本に残る理由(子どもの養育、自身の交友関係など)
7. 納税や法律順守等の義務を果たしている
上記の要件が基本的な考え方になりますが、様々な状況によって判断されますので手続きは慎重に進めて下さい。
「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への在留資格変更許可が認められた事例及び認められなかった事例については以下をご覧ください。
子どもが生まれたら
国際結婚をして子どもが生まれた場合、まずは戸籍法に基づき、生まれた日を含め14日以内に居住地の市区町村へ出生届を提出しましょう。
同時に、外国人配偶者の母国の大使館または領事館への出生届の提出も必要になります。国によって提出する書類等が違いますので、事前に問い合わせをしておきましょう。
子どもは日本の国籍法により日本国籍を選択することができます(父母両系血統主義:父母の一方が日本人であれば日本国籍を取得できる)
しかし、生まれたばかりの子どもは国籍選択をすることができないため、22歳までに選択すればよいことになっています。
日本は重国籍を認めていないので、日本国籍か外国人配偶者の母国の国籍かを22歳までに必ず選択する必要があります。
また、外国人配偶者の母国の国籍法により、外国人配偶者の母国の国籍を選択し取得できるかが変わってきます。
日本と同じ父母両系血統主義を採用している国では外国籍を選択することもできますが、外国人配偶者の母国がアメリカのような出生地主義を採用している国であれば、日本国内で出産した場合に外国籍を選択取得することはできません。
血統主義
父母両系血統主義・・・父母の一方の国籍を取得できる
父系優先血統主義・・・父親の国籍が子どもの国籍になる
生地主義
出生地主義・・・両親の国籍に関係なく、自国の領域内で生まれた子どもにはその国の国籍を取得できる
その他
両系血統主義だが、条件付きで生地主義を採用・・・父母の一方が市民権を有するか、または国内に定住していることなど
主な国の採用している国籍法は以下をご覧ください。
父母両系血統主義 |
父系優先血統主義 | 出生地主義 | 条件付きで生地主義を採用 |
---|---|---|---|
日本、アイスランド、イスラエル、イタリア、エチオピア、エルサルバドル、オーストリア、オランダ、韓国、ガーナ、ギリシャ、スウェーデン、スペイン、スロバキア、タイ、中国、デンマーク、トルコ、ナイジェリア、ノルウェー、ハンガリー、フィリピン、フィンランド、ブルガリア、ポーランド、ルーマニア など |
アラブ首長国連邦、アルジェリア、イラク、イラン、インドネシア、エジプト、オマーン、クウェート、サウジアラビア、シリア、スーダン、スリランカ、セネガル、マダガスカル、モロッコ、レバノン など | アイルランド、アメリカ、カナダ、グレナダ、ザンビア、タンザニア、ニュージーランド、パキスタン、バングラデシュ、フィジー、ブラジル など | イギリス、オーストラリア、オランダ、ドイツ、フランス、ロシア など |
その他ご不明点は以下をご覧ください。
外国にいる子ども(配偶者の連れ子)を日本に呼び寄せたい
外国人配偶者が日本人と結婚する前に外国で結婚していて、外国籍の子どもがいる場合もあります。
その子どもを日本に呼び寄せ、一緒に日本で暮らしたい場合は「定住者」ビザを申請することになります。
呼び寄せる子どもは未成年であり未婚であることが要件になります。20歳以上ではまず許可になりません。
また、20歳以下でも年齢が高いほど(18〜19歳など)不利になります。定住者は就労制限がないため、日本で働くためにビザをとるのではないかと判断されるためです。
あくまで外国人配偶者の子どもを日本に呼び、夫婦で扶養することが必要です。よって、世帯収入が低い場合には扶養能力がないと判断されることになります。
呼び寄せた後、一定期間扶養(例えば成人するまでなど)し、高水準な日本の教育を受けさせるといった生活設計を計画しないと、単なる家計の足しにアルバイトをしてほしいから呼び寄せるのではないかという判断になりかねません。
そのため、なぜ呼び寄せたいのかという理由と日本における経済状況は、審査において重要な要件となってきます。
永住ビザへの変更
永住ビザについては 永住・帰化申請 ページをご覧ください。
日本人の配偶者等ビザにおいては「日本人,永住者及び特別永住者の配偶者の場合,実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること」とされており、就労ビザ等からの変更に比べ在留期間の要件が短く、就労期間の要件もありません。
また、定住者ビザにおいても「「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること」とされています。
詳しくは以下のサイトをご覧ください。