建設業許可制度
知事許可と大臣許可
建設業法に基づき、一件の請負代金が500万円以上の建設工事を施工する場合は、所在地を所管する知事か、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。
ただし、建築一式工事の場合で、その契約額が1500万円未満か、延床面積が150平米未満の木造構造で延面積の2分の1以上を住居に供する住宅を建てる場合は、許可を受けずに請負うことができます。(建設業法第3条)
【表1:知事許可・大臣許可の区分】
知事許可 |
大臣許可 |
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1の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業しようとする事業者が受ける許可 |
2以上の都道府県の区域に営業所を設けて営業しようとする事業者が受ける許可 |
一般建設業許可と特定建設業許可
特定建設業許可は、一般建設業に比べて許可基準が加重されています。(下請負人の保護が目的)
許可された特定建設業の事業者は、下請け代金の支払い等に関し多くの規制が入ります。
【表2:特定建設業許可・一般建設業許可の区分】
特定建設業許可 |
一般建設業許可 |
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発注者から直接請負う1件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を下請け代金の額(その工事に下請け契約が2以上あるときは下請け代金の総額)が4,000万円(その工事が建築一式工事の場合には6,000万円)(取引にかかる消費税及び地方消費税額含む)以上となる下請契約を締結して施工しようとする者が取得する許可 |
特定建設業の許可を受けようとする者以外の者が取得する許可 |
業種別許可
建設業の許可は29の建設工事の種類ごとに、それぞれ対応する許可を受けることになっています。
各業種ごとに一般建設業又は特定建設業のいずれか一方の許可を受けることができます。
土木一式工事及び建築一式工事については他の27の専門工事とは異なり、大規模又は施工内容が複雑な工事を、原則として元請業者の立場で総合的にマネジメントする事業者向けの許可となっています。
そのため、一式工事の許可を受けている業者でも、他の専門工事を単独で請け負う場合は、27の専門工事のうち該当する許可を別途受けなければならないことに注意が必要です。
なお、本体工事に附帯する工事については、発注者の利便性の観点から、本体工事と併せて請負うことができる場合があります(附帯工事)
許可の有効期間
許可の有効期間は、許可のあった日から5年間です。(5年目を経過する日の前日をもって満了)
期間の最終日が日曜等の行政庁の休日であっても、その日に満了することになります。
建設業を引き続き営む場合は、期間満了の30日前までに許可の更新手続きをとらなければなりません。
手続きをせずに期間満了となれば、許可は失効し、その後の営業ができなくなります。
建設業許可の要件
建設業許可を受けるためにはいくつかの基準が設けられており、要件を備えていない事業者には許可がされないよう措置されています。
建設業許可を受けたい場合には、まずは要件を具備しているか判断すると良いでしょう。
下記表に簡単に要件を記載していますので、自社はあてはまるのか確認してみてください。
【一般建設業許可要件チェック】
要件 | 内容 | 自社 |
---|---|---|
経営業務の管理責任者はいるか |
・許可を受けようとする建設業の管理経験者 |
いる・ いない |
専任技術者となり得る者はいるか |
・許可を受けようとする建設業の実務経験者 |
いる・ |
不正または不誠実な行為はないか |
・建築士法、宅建業法等の免許等の取消処分 |
はい・ |
財産的基礎はあるか |
・自己資本が500万円以上である、または調達できる |
はい・ |
欠格要件に該当しないか |
・行為能力がある(成年被後見人等ではない) |
はい・ |
*各要件の細かい説明は以下の記事を参考にしてください。
経営業務の管理責任者としての経験を有する者を有していること
複雑な産業特性を有する建設業における適正経営を確保することが目的です。
許可を受けようとする事業者が法人の場合は、常勤の役員のうち1人が、また、個人である場合には本人又は支配人のうちの1人が、次のいずれかに該当している必要があります。
@許可を受けようとする建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有していること。
例えば、管工事の建設業許可を受ける場合には、管工事に関し5年以上の経営管理者経験があれば良いです。
A許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し、6年以上次のいずれかの経験を有していること。
a)経営業務の管理責任者としての経験
b)経営業務管理責任者に準ずる地位にあって、経営業務の執行に関して、取締役会等から具体的な権限委譲を受けて、その権限に基づき執行役員等として経営業務を総合的に管理した経験
例えば、舗装工事の建設業許可を受ける場合には、それ以外の建設業にて上記(a)又は(b)に当てはまる経営管理者経験が6年以上あれば良いです。
B許可を受けようとする建設業に関し、経営業務管理責任者に準ずる地位(使用者が法人である場合には、業務を執行する社員、取締役又は執行役に次ぐ職制上の地位をいい、個人である場合にはその本人に次ぐ地位をいいます)にあって、次のいずれかの経験を有していること。
a)経営業務管理の執行に関して、取締役会等から具体的な権限委譲を受けて、その権限に基づき執行役員等として許可を受けようとする建設業について、5年以上経営業務を総合的に管理した経験
b)経営業務管理責任者に準ずる地位(法人の場合は業務を執行する社員等、個人の場合は支店長などの営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上の地位にある者)にあって、許可を受けようとする建設業に関する建設工事の施工に必要とされる資金調達、人員配置、下請け業者との契約締結等の経営業務全般について6年以上従事した経験(経営業務補佐)
【表3:経営管理経験まとめ】
許可を受けようとする建設業の経営管理経験 |
許可を受けようとする建設業以外の経営管理経験 |
---|---|
経営業務管理責任者の経験が5年以上ある |
経営業務管理責任者の経験が6年以上ある |
経営業務管理責任者に準ずる地位にあって権限に基づき経営業務を総合的に管理した経験が5年以上ある |
経営業務管理責任者に準ずる地位にあって権限に基づき経営業務を総合的に管理した経験が6年以上ある |
経営業務管理責任者に準ずる地位にあって経営業務全般について従事した経験が6年以上ある |
令第3条に規定する使用人について
「建設業法施行令第3条に規定する使用人」とは、建設工事の請負契約の締結及びその履行に当たって、一定の権限を有すると判断される者すなわち支配人及び支店又は営業所(主たる営業所を除く。)の代表者である者が該当する。
これらの者は、当該営業所において締結される請負契約について総合的に管理することが求められ、原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している者がこれに該当する。
令第3条に規定する使用人とは、建設業法施行令第3条に規定する使用人のことで、会社の代表者から契約締結などの一定の権限を委任された支店や営業所の長、いわゆる支店長や営業所長などのことをいいます。個人事業でも支配人登記された支配人が該当しますが、法人個人問わず常勤であることが必要です。
令第3条に規定する使用人に該当する者で、経験年数があれば経営業務の管理責任者として認められます。
*具体的な認定基準については、建設業許可事務ガイドラインをご覧ください。
=法改正情報=
2020年10月1日に改正された新建設業法が施行されます。経営業務の管理責任者について、要件が変更されます。現行の要件は上記の通りですが、改正後は下記第7条のようなものとなります。
改正後
第7条
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
各営業所に技術者を専任で配置していること
各営業所には、許可を受けようとする建設業に関する一定の資格または経験を有する技術者を専任で配置することが求められます。
@専任については、その営業所に常勤して専らその職務に従事する者となります。そのため、専任技術者は各営業所の常勤職員の技術者から専任することが必要です。
なお、営業所の専任技術者が工事現場の主任技術者等(各工事現場の施工管理等を担当する技術者)を兼ねようとする場合は、以下の基準を全て満たす必要があります。
a)当該営業所において請負契約が締結された建設工事であること
b)工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事し得る程度に工事現場と営業所が近接し、営業所との間で常時連絡を取り得る体制にあること
c)当該建設工事が、主任技術者等の工事現場への選任を要する工事(公共性のある工作物に関する重要な工事で、請負金額3,000万円(建築一式工事は7,000万円以上))ではないこと
A専任技術者となるための技術資格要件は、許可を受けようとする建設業が一般建設業であるか特定建設業であるかで異なります。
また、許可を受けようとする業種により技術資格要件の内容が異なります。
【表4:一般建設業・特定建設業の営業所専任技術者となり得る技術資格要件】
一般建設業の営業所専任技術者となり得る技術資格要件 |
特定建設業の営業所専任技術者となり得る技術資格要件 |
---|---|
1.一定期間以上の実務経験を有する者
A指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後5年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後3年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者のうち、専門士又は高度専門士を称するもの
B許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
C複数業種に係る実務経験を有する者 |
1.指導監督的実務経験を有する者
*「指導監督的実務経験」とは、建設工事の設計、施工の全般にわたって工事現場主任や現場監督者のような資格で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます |
2.国家資格者(一定の国家資格等を有する者) |
2.国家資格者(一定の国家資格等を有する者) |
3.その他 |
3.その他 |
《解体工事業の新設に伴う経過措置》
解体工事業の新設に伴う経過措置として、平成28年6月1日時点において現にとび・土工工事業の技術者に該当する者は、平成33年3月31日までの間に限り、解体工事業の技術者とみなされます。
*指定学科、複数業種に係る実務経験についてはこちらをご覧ください。
*一定の国家資格等についてはこちらをご覧ください。
*指定建設業7業種
土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業
【表5:一般建設業における営業所の任技術者となり得る学歴・実務年数まとめ】
学歴など |
実務経験年数 |
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大学、短大、高専の指定学科修了者 |
3年 |
専門学校の指定学科修了者で、専門士または高度専門士である者 |
3年 |
高校または専門学校の指定学科修了者 |
5年 |
不問 |
10年 |
*複数業種に係る実務経験を有する者 |
詳しくはこちら |
請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らか者でないこと
建設業許可においては一定の基準を設け、請負契約の締結やその履行に際して不正または不誠実な行為をするような者を排除する仕組みがあります。
具体的には、申請者が法人である場合は当該法人、その非常勤役員を含む役員等、支配人および営業所の代表者が、申請人が個人である場合はその個人、支配人および営業所の代表者が、建築士法、宅地建物取引業法等の規定により不正または不誠実な行為を行ったとして免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しないものである場合は、この基準を満たさないものとされます。
請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していること
建設業においては、資材購入等、工事着工のための準備費用を要するなど、その営業に当たってある程度の資金を確保していることが必要になります。
そのため、許可を受ける建設業者として最低限度の経済的な基準が設けられています。
既存の企業にあっては申請時直前の決算期における財務諸表において、新規設立企業においては創業時における財務諸表において、以下の基準を満たしていることが必要です。
【表6:財産的基礎又は金銭的信用の基準】
一般建設業許可の場合 |
特定建設業許可の場合 |
---|---|
次のいずれかに該当すること |
次のすべてに該当すること |
過去において一定の法令の規定等に違反した者等でないこと
建設業許可基準のうち、欠格要件等として設けられたものです。
以下の事項に該当する場合には、建設業許可は受けることができません。
【表7:欠格要件等】
拒否事由 |
欠格要件 |
---|---|
・申請書またはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、または重要な事実の記載が欠けている場合 |
@成年被後見人、保佐人または破産者で復権を得ない者 |
*法人の役員等、支配人、営業所の長(令第3条に規定する使用人)などに該当者がある場合を含みます。
建設業許可を受けるための手続き
申請書の作成 ⇒ 申請手数料の納付 ⇒ 行政庁への申請書類の提出
の順番で手続きをすすめます。
要件が整ったら申請書類を作成して、主たる営業所を管轄する各都道府県の建設業許可窓口に提出します。
申請書の入手や提出先等については以下をご覧ください。
提出書類は、法定書類(法令により規定された書類)と確認書類(法定書類の記載事項を裏付ける資料)があります。
必要となる書類については以下をご覧ください。
工事経歴書の記載方法については以下を参考にしてください。
確認書類について
建設業許可の申請にあたっては、許可行政庁より確認書類(法定書類の記載事項を裏付ける資料)が必要です。
経営業務の管理責任者等が申請書の記載通り現に企業に常勤しているかなど、客観的に証明するための書類や申請内容の事実確認を行うための書類の提示・提出を求められます。
現在の常勤性を証明する書類
@住民票など現住所が確認できるもの
A健康保険被保険者証または国民健康保険被保険者証の写しなど
Bその他常勤性が確認できるもの
経営業務の管理責任者としての経験を証明する書類
@経験期間を証明するもの
a)法人の役員(執行役員等除く)経験については商業登記簿謄本など
b)令第3条に規定する使用人としての経験については変更届け出書など
A経験業種を証明するもの(@の経験期間分が必要)
a)法人の役員(執行役員等除く)経験については建設業許可通知書の写し
b)令第3条に規定する使用人としての経験については経験期間中の許可申請書別紙2(1)または(2)の写し
c)許可のない期間中の軽微な工事での経験については工事請負契約書、工事請書、注文書、請求書の写し
現在の常勤性を証明する書類
@住民票など現住所が確認できるもの
A健康保険被保険者証または国民健康保険被保険者証の写しなど
Bその他常勤性が確認できるもの
実務経験を証明する書類(要件が実務経験の場合)
@実務経験の内容を証明するもの
a)証明者が建設業許可を有している期間については建設業許可通知書の写し
b)証明者が建設業許可を有していない期間については、工事請負契約書、工事請書、注文書、請求書の写し
A実務経験証明期間の常勤(又は営業)を確認できるものとして以下のいずれか
a)健康保険被保険者証の写し(事業所名と資格取得年月日の記載されているもので、引き続き在職している場合に限る)
b)厚生年金加入期間証明書または被保険者記録照会回答票
c)住民税特別徴収税額通知書の写し(期間分)
d)確定申告書
e)その他常勤性が確認できるもの
B指導監督的実務経験を証明する書類(指導監督的実務経験が要件になる場合に限ります)
a)指導監督的実務経験証明期間の常勤性を確認できるもの
b)指導監督的実務経験証明書の内容欄に記載した工事すべてについての契約書、工事請書、注文書等の写し
@住民票など現住所が確認できるもの
A健康保険被保険者証または国民健康保険被保険者証の写しなど *注
B本人に代表権がない場合は委任状の写し(見積もり・入札・契約締結等の権限を委任されていることが確認できるもの)
*福岡県知事許可においては、令和2年4月1日よりAの書類は添付不要となりました。
営業所の実態が確認できるもの
@営業所所在地付近の案内図(最寄駅等からの経路がわかるもの)*注
A営業所等の写真(下記すべて)
a)営業所の建物全景および案内板を写したもの
b)営業所内の主な執務室の状況を写したもの
c)建設業の許可票(建設業法施行規則に規定する標識の設置箇所、周辺状況を含む)を写したもの
e)その他、営業所の名称がわかる営業所の入り口を写したもの(営業所がビル内にある場合は、入り口またはエレベーターホール等にある営業所の案内板を写したもの)
*福岡県知事許可においては、令和2年4月1日より@の書類は添付不要となりました。
建物の所有状況が確認できるもの
@自社所有の場合は以下のいずれか
a)建物の登記簿謄本の写し(発行後3ヵ月以内のもの)
b)建物の固定資産物件証明書または固定資産評価額証明書の写し
A賃借している場合は賃貸借契約書
健康保険及び厚生年金保険
申請時直前の健康保険および厚生年金保険の保険料納入に係る領収証書または納入証明書の写し
雇用保険
申請直前の労働保険概算・確定保険料申告書の控え、および申告した保険料納入に係る領収済み通知書の写し
申請区分について
建設業許可申請には以下の表のような区分があります。
【表8:申請区分】
申請区分 |
概要 |
---|---|
新規 |
現在有効な許可を受けていない者が、新たに許可を申請する場合 |
許可換え新規 |
現在有効な許可を受けている者が、以下のいずれかに該当することにより、許可行政庁以外の行政庁に対して新たに許可を申請する場合 |
般・特新規 |
現在有効な許可を受けている者が、以下のいずれかに該当することにより、許可行政庁に対して新たに許可を申請する場合 |
業種追加 |
現在有効な許可を受けている者が、以下のいずれかに該当することにより、許可行政庁に対して新たに許可を申請する場合 |
更新 |
既に受けている建設業許可について、その更新を申請する場合 |
許可申請手数料
建設業許可申請をするにあたり、以下の手数料がかかります。
【表9:許可申請手数料】
申請区分 |
一般と特定のいずれかを申請する場合 |
一般と特定の両方を同時に申請する場合 |
---|---|---|
新規 |
9万円 |
18万円 |
許可換え新規 |
9万円 |
18万円 |
般・特新規 |
9万円 |
該当なし |
業種追加 |
5万円 |
10万円 |
更新 |
5万円 |
10万円 |
般・特新規+業種追加 |
該当なし |
14万円 |
般・特新規+更新 |
該当なし |
14万円 |
業種追加+更新 |
10万円 |
更新は般又は特のみの場合 15万円 |
般・特新規+業種追加+更新 |
該当なし |
19万円 |